メイドラゴンの映画を観てきた

アニメ感想





 「映画 小林さんちのメイドラゴン さみしがりやの竜」を観に行ってきました。休日を半日使っておでかけだなんて、なんとも有意義な活動をしました。

 同作は原作を読んだことがなく、アニメ版も妻が視聴していたのを隣で飛ばし飛ばし見ていた程度でしたが、劇場に足を運びました。「映画館でみなくてもよいかな」と言いがちな妻がめずらしく積極的に「行きたい!」と要望した映画でしたので、まあ話がわからなくてもよいかと思いつつ、一緒に観に行きました。

 アニメ1期2期ともにつまみ食いのわたしでしたが、十分に楽しめました。アニメ力の高い作品を観ると、出不精を押しのけて外出した甲斐があると満足できますね。

妻に付き合ってメイドラゴンの映画を観る

 妻は「小林さんちのメイドラゴン」アニメ版が好きです。1期放送時、配信サービスで繰り返し視聴している様子でした。妻がドラゴン好きなのはよく知っていましたが、「人間態になる作品もありなのか」という発見をした記憶があります。2期は放送期に仕事が忙しかった為に視聴できていなかったのですが、今回の映画に備えて2日で履修していました。わたしもそれをチラチラ見ていたので、つまみ食い程度の知識を得られました。

 わたしはといえば、積極的に追っていた作品ではなく、1期2期ともに妻が観ているのを一緒に見ただけでした。主要キャラの設定や関係性ぐらいはわかっていたものの、特に好みのキャラがいるわけでもありません。メイドラゴンをモチーフにしたっぽい遊戯王の「ドラゴンメイド」カードの方がまだ馴染みが……いえ、あちらもそれほど馴染みはありませんが。

 とにかく、ひとりでしたら、劇場に足を運ぶまでのモチベーションはありませんでした。個人的に、才川の顔芸(?)があまり好きでなく「カンナがメインの映画ということは才川のアレもあるんだろうなぁ」と思うと足も遠のくというものです。

 しかし、妻が行きたいというのなら、観に行くのもやぶさかではありません。作品自体も、毒気や不快感はなく、嫌いなわけではありませんからね。
 

原作・アニメ未履修でも楽しめた

 で、浅い知識で観に行ったわけですが……結論からいえば、とてもよい映画体験ができました。なにかと作品に文句を言いがちなわたしですが、特段熱を上げているキャラがいなかったというのもあって、キャラの出番や描写の過不足が気になったりとか厄介ファン視点を持つこともなく、フラットに楽しめました。

 厄介視聴者目線で文句を言いがちな「マナの濃度が違う世界に急に異世界人が行ったら体を壊すのでは」という部分も、「アニメの方でヨモツヘグリしてたし身体も慣れるか」「なんか魔力が高そうなドラゴンに囲まれてるし平気なのかも」とか、わざわざ説明がなくても納得できる要素もあり、ひっかかりなく話に集中できました。

 アニメ版のつまみ食い程度のキャラ・設定認識でも話はわかりましたし、変に入り組んだ作中用語等が無いのもよいですね。「なんかわからないけどすごいことが起きている。よくわからんけど」となるシーンがなく、これもある種の異種間コミュニケーションかとわかるひと夏の冒険(直喩)でしたね。往年のジャンプアニメ映画のような感もあり、初見でストレスなくすんなり観られる映画でした。作品に入れ込んでいない身からしたら、悪い点が見当たらない作品と言ってよいです。また、カッコウの生態を美談として扱う作品は初めてで、かなり斬新な表現だと感じました。

 アニメ版ファンの妻からも「すごくよかった」と好評でした。

キムンカムイはバカ親父なのか?

 父娘の関係性について触れた作品でしたが、あいにくわたし個人の「父」のイメージが薄く、テーマとして「刺さる」ものはありませんでした。

 わたしにも当然に、生物学上で父と呼ばざるを得ない血縁者はいますが、そこに父性というものは認識していません。なので、わたしにとっての「父」のイメージは各種創作物から学んだものなのですが……印象に残るサンプルが偏っているのがよくありませんでした。

 カンナの父・キムンカムイが父親として(人間目線では)まるでダメな親父として描かれていました。たしかに、作中人物からすれば怒りをぶつけたくなるのはわかります。しかし、わたしのサンプルの父親(創作)に蛮野天十郎やら壇正宗やらが燦然と輝いている所為で、「『仲間』と呼んでくれるだけかなりマシな父親なのでは?」と思ってしまいました。いえわかってはいます。一般的な父親は酒と戦いに明け暮れて娘を放ったらかしにしたしはしないのです。なのに、どうしても戦いしごとに真面目で趣味が酒な気持ちのよい親父という好印象がずっとありました。むしろ、人間側の価値観を押し付けるなよ、と。

 まあ、結果的にドラゴン流のコミュニケーションとして、力で勝ったうえで人間側の意見を通していて、前段階の文通も含めて後腐れがない晴れやかな決着でした。

アーザードは……

 キムンカムイの軍師として登場し、うさんくささを漂わせながらも「人間の価値観がわかるやつ」のような顔をしていたアーザード。二勢力が一触即発であるという情報が出た瞬間に「こいつムルムクスモン(※)では」とわかる程度には、わかりやすい暗躍でした。
※ムルムクスモン:デジモンフロンティアの映画の黒幕のあいつ。

 ああいう落としどころになった彼ですが、あれが救いになるかといえばそうでもないし、かといってほかにより良い着地があったかと問われると答えれず、考えさせられるキャラでした。誰一人として本当の味方がいない中、長年にわたり、ただ生きる目的・心の拠り所の為に粉骨砕身邁進してきた末に、その努力が打ち砕かれて否定されるのですから、やりきれません。彼だって、過去の出来事がなければああはならなかったでしょうし、ああなりたかったわけでもないでしょう。「救ってくれる人がいなかった」というのが切ないです。誰も助けてくれないから自分一人で頑張って、復讐を拠り所にして生きてきただろうにそれを奪われて……。彼になんの罪があったというのか。

 まあ、異世界的には、守りたいものを守れる力がなかったというのが罪なのでしょう。罪があるなら罰が必要です。死にぞこなって生き残ったのも罰であり、描かれた末路も罰であり、生まれを呪う以外に仕様がありません。
 
 悪役に思いを馳せるのはいつものことなので、アーザードに特別感じ入るものがあったわけではないのですが、「悪」と呼ぶにはモヤモヤする悪役でしたね。

夏映画といったらこういうEDテーマ

 夏のアニメ映画といったこういうエンディングテーマですよね! ということを、しみじみと思う曲でした。紅白歌合戦で舞台と一体化したようなすごい衣装を着る人ぐらいに認識しかしていない小林幸子氏ですが、お声を聞くと落ち着きますね。「夏のアニメ映画」が「ミュウツーの逆襲」で止まっていることは否定しませんが、ひとしきり本編を楽しんだあとに、あの落ち着く声でのエンディングで締めてもらえるのは「よいものを観た」と満足感を高めてくれます。

 ゲストキャラ? のドラゴンからやたら貫禄のある声がすると思ったら小林氏でした。パンフレットで該当ドラゴンのビジュアルを確認したところ、なんとなくシルエットが小林氏の「すごい衣装」にも見えるような……。「小林」つながりでの起用なのでしょうか。アニオリ要素で非声優の演じるキャラに長尺を充てるのはあまり好きではないのですが、小林ドラゴンのシーンは見ごたえがあり、とてもよかったです。

 小林幸子氏がゲストキャラを演じつつ、エンディングテーマを歌う映画は名作というジンクスができてしまいますね。ミュウツーの逆襲もそうだそうだと言っています。

個人的に才川への認識が改まった

 個人的に才川の「アレ」が苦手だと述べました。……が、嫌いというわけではなく、あの芸さえなければなぁと思っていたのが、よりはっきり言葉にできるようになりました。

 まず、キャラデザはどちらかと言えば好みです。おでこが素敵ですよね。次に、性格面も「分別のある子ども」として評価しております。自身の短所を自覚しつつ、好きなものに好きと言える子どもらしい素直さを持っていますからね。加えて、品がよいです。友達をさん付けで呼んだり、他人の家にお邪魔する際の振る舞いも丁寧です。「アレ」さえなければ、完璧美少女といって差し支えないのではと思うわけです。

・同性の友達が大好き
・品がよく、聡い
・好きなものにまっすぐ
 ……と、箇条書きにしていけば、ほぼ知世ちゃんです。知世ちゃんを完璧として見てしまえば、才川の「アレ」は玉の瑕になってしまいます。しかし、知世ちゃんは知世ちゃん、才川は才川です。

 今回、映画を観まして、才川への認識が改まりました。ノルマ的に1度だけ例の「アレ」があったものの、ギャグに終始することなく、きちんと「カンナの親友」として描かれたのを観られたおかげで「よいところがたくさんあるし、少しだけ変なところもある、よい子」と思えるようになりました。

 苦手なキャラへの好感度が上がることはあまりありませんので、貴重な体験ができました。

おわりに:映画館に足を運ぶのはよいもの

 なんだかんだ映画館に行くというのは、やはり好きです。特に暑い中でかけて、涼しい映画館で映画を観て、また暑い中帰るという一連の流れにはノスタルジーを感じるところもあり、休日の過ごし方として非常に有意義です。映画館はよいぞ。

 映画館に足を運ぶと、その場の空気感を楽しめるのはもちろんですし、売店でパンフレットを買ったり、入場特典がもらえたりと「思い出」を持ち帰ることができるのがよいです。入場特典のイラストカードは、妻が大変気に入って部屋の壁に貼っています。これを見るたびに映画を観に行ったことを思い出せるので、やはりこういうおみやげがあるのはよいです。

 あまり知らない作品でも、映画館に足を運んでみるものですね。かえって新鮮に楽しめたりします。たまにはこういう映画の観方もよいなあ、と思いました。

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