わたしはTCG(トレーディングカードゲーム 以下トレカ)を趣味のひとつとしています。遊戯王直撃世代ということもありますし、同じ時代に様々なトレカが生まれては消えを繰り返したトレカ全盛期に子供時代を過ごしたというのも大きいです。
集めるのも好きですし、対戦相手がいればプレイするのも好みます。現在はもっぱら、妻に遊戯王の相手をしてもらっていますが、その他のトレカも触っています。懐具合の都合で買えなくなって久しいですが、デジモンカードやイジンデンは良コンテンツだと思っています。
さらには好きが高じて自作のトレカ制作を試みたこともあります。ルール整備はそれなりにできたつもりですが、イラスト外注や印刷にかかる費用の工面が無理そうなので、企画が塩漬けになっています。安く見積もってもイラスト1枚2~3万円×60種程度+印刷費と考えると、かなりの高額になります。道楽で3桁万円を出費する余裕はないのです……。
そんなトレカですが、一般的には、カードを集めて対戦するプレイヤーとカードを集めること自体を目的にしたコレクターとにファンが大別されます。どちらも、カードを買い求めるという点は共通しています。量販店などで販売されるスターターデッキやブースターパックを購入することでカードを集めるわけですが、それだけで目当てのカードを揃えるのが難しい場合があります。プレイヤーであれば、デッキに複数枚入れたいカードを必要な分だけパックから引き当てるのが大変ですし、コレクターなら数百パックに1枚のレアカードを引き当てるのに苦労するでしょう。
そういった需要に応えて、トレカの1枚1枚に値段をつけて売ってくれるのがカードショップです。プレイヤーの求める強いカードや便利なカード、コレクターの求める稀少なカード、またはそれらの特徴を両立するカード……カードショップでは、これらを1枚単位で買うことができます。言ってしまえば「たかが紙切れ」に過ぎないトレカに目玉が飛び出るような値段がつくこともあります。1パックで高額なカードを引き当てられればよいのでしょうが、そんな強運を持つ人は限られます。高価なカードはショップで買い求めるほうが安くつくことも、ままあります。
強いデッキを組むにしても、求めるレアカードを手に入れるにも、トレカというのはとかくお金のかかる趣味です。
わたしが小学生だった頃から、カードショップというものはありまして、レアカードがショーケースに並んでいたそうです。「そうです」と伝聞の形であるのは、わたしがカードショップに初めて踏み入ったのが高校の頃でして、小学生時代の店舗の様子は直接見ていないからです。
トレカ好きの小学生が、眺めるだけでも楽しいレアカードが並んだカードショップに行かなかったというのは、親からも学校からも「近づかないように」とお触れが出ていたからです。その為、あの頃にカードショップを出入りしていたのは、学校のお触れを無視する程度にやんちゃな子らだけでした。
小中学生というのは、自分で自由に使えるお金はそう多くありません。ありがたいことに毎月のお小遣いというものを貰えていたわたしですが、ジャンプコミックス1冊買ってほぼ使い切るぐらいの金額でしたので、カードパックを買うのも容易ではありませんでした。限られたタイミングで手に入るカードを大事に、有り物を寄せ集めて作ったデッキで対戦するのが楽しかったです。しかし、「札束で殴り合う」と称されるのがトレカなわけで、お金持ちの家の子とは明確にデッキパワーの差がありました。強いカードをたくさん持っているほうが強いのは当たり前のことですね。
カードショップへの立ち入りを禁止されていますし、入れたとしてもレアカードを買えるようなお金は、当時のわたしにはありませんでした。だからこそ、自分の運でパックから引き当てたカードが「仲間」でした。縁や情を感じていても、金で買われた強いカードには敵いません。
自分では買えないという悔しさと、「縁も何もなく金で買った仲間」という汚らわしさから、当時はトレカを1枚単位で購入するシングル買いが嫌いでした。シングル買いに当然のように頼るプレイヤーも嫌いでした。我ながら愚かしい潔癖さです。
「でした」という過去形からお察し頂けるでしょうが、現在はそれほどの抵抗感はなくなりました。絶版のカードなどはシングル買いでないと手に入らないものです。そうでなくても、数百円ぐらいのシングル買いなら、パックから引き当てるより余程安く済みます。大人になって自由に使えるお金が増えても、トレカを十分に楽しめるほどのお金を稼げないというのが寂しいですね。
子ども時代のトレカ体験の違いはありますでしょうが、新しくトレカを始めるにあたってシングル買いが当たり前の選択肢に入っている人が多いことにカルチャーショックを受けたりもします。
コスパ重視の時代柄なのか、組みたいデッキに必要なカードをリストアップして、これをシングル買いで集めるというのが珍しくないようです。スターターデッキ1つとブースターパック5パックぐらいを買って、自分なりに組み換えて遊ぶというところが始まりなのではないのかと思ってしまいます。誰かが考えたデッキを真似て、それを構成するカードたちだけを集めて、そうして遊ぶことの楽しさはわたしにはわかりません。
トレカ全盛期を過ごしたオジサンとしては、パックを開封する際の楽しさや、限られた手持ちのカードで工夫してデッキを組むというのがトレカの醍醐味のひとつだと思うのです。
ゲームでの強い弱いではなく、値段の高い安いでもなく、縁があって自分の運で引き当てて、苦楽を共にしたカードこそが相棒になるのではないでしょうか。とっておきの1枚、マイフェイバリットカードはシングル買いでは出会えないのではないかと。……いえまあ、誕生日プレゼントなどで特別に買ってもらった1枚などのエピソードが付随すれば、また事情は違いますでしょうが。
時間も経って、シングル買いのよさもわかりましたので「嫌い」「好きじゃない」とまでは思わなくなりました。しかし、パックから引き当てるのとは「ちょっと違う」と、今でも思っています。まあ、妻と共にカードショップを訪れて、1枚2枚買うようなことはたまにありますので、だいぶ潔癖さが薄れたものです。
トレカのシングル買いが好きじゃなかった

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