「人生はずっと上り坂。苦しいよな? つらいよな? だけど、今日は昨日より高いところにいるんだ。だから、自分を信じて!」
気持ちを励ましてくれるこのセリフを発した熱海常夏という男に心を奪われました。
特撮ドラマで、初登場回でこれほどまでに心を掴まれるキャラクターは久しぶりな気がします。
熱海常夏は現在放送中の「ナンバーワン戦隊ゴジュウジャー」に登場するキャラクターです。
アニバーサリー作品である本作は、タイトルにあるゴジュウジャーのメンバーとそれに敵対する怪人たち以外にも、過去作品の戦隊ヒーローに変身するキャラクターが登場します。過去作品の登場人物とは別人ですが、ある意味でそのヒーローの別の可能性を見ているようでワクワクします。
その中で、熱海常夏は「暴太郎戦隊ドンブラザーズ」のドンモモタロウに変身します。あのドンモモタロウに変身するということで、ハードルが随分あがるわけですが、その期待を裏切らないよいキャラクターです。
作中の日本における史上最年少の総理大臣であり、支持率5000%超えという何をどう集計したのか分からない数値をたたき出す人心掌握の鬼です。5000%と聞いて連想するどこかの1000%の仮面ライダーと比べても遜色ない「仕事ができる」人物に見えます。
腹黒さはありつつも、市井を歩き、弱者やはぐれ者にも自ら手を差し伸べる男です。
やなせたかし氏がヒーローについて、怪獣を倒す強い人の事でなく、困った人に食べ物を分け与える者というようなことを語っていたように思いますが、熱海常夏はこれにも当てはまるのではないでしょうか。
自身が支持を得る為とはいえ、国民に対して腹黒さを隠し、民草の住みよい国を作ろうと率先して行動するのは「困っている人に食べ物を与える」ヒーローに重なります。現実の日本においても、今求められているのはこういうヒーローなのでないかとしみじみと思います。
政治家らしく耳障りのよい……言ってしまえば胡散臭いセリフばかりを並べる彼ですが、「国民のご要望を叶えるのが、私の仕事」「困っている人を見過ごさない」「日本のリーダーとして当たり前のことをしただけです」と言いながら、有言実行しているのですから、そりゃあ国民からも「常夏総理」とファーストネームで呼ばれる信頼度になるわけです。
暑苦しい綺麗ごとばかり吐いても、それを本当にするなら、ただただ素晴らしい人間です。だってみんな本当は綺麗ごとがよいのですから。
人気取りの踏み台にされた遠野吠/ゴジュウウルフは熱海常夏に対して怒りを燃やしていました。気持ちはわかります。しかし、はぐれ者である吠が「自分も人気者になれるかもしれない」と常夏によって導かれたこと自体は事実なので、道義的には常夏は「悪役」でないというのも素晴らしい立ち居振る舞いでした。
熱海常夏役の俳優・七瀬公氏が以前にウルトラマントレギア(の人間としての姿)を演じていたというのも、目を向けたい部分です。
友人であるウルトラマンタロウが無神経で空気が読めない所為で心にわだかまりを抱え、さらには尊敬する上司が思い詰めて闇堕ちしたのを知ってしまった為に、あんな具合になってしまったトレギアですが、その人間態を演じたのが七瀬氏です。個人的には実写版シャフ度とも言える振り返り方が印象的でした。
ウルトラマンタロウのように成れなかったトレギア(の人間としての姿を演じた役者)がドンモモタロウに転生したのだと思うと、感慨深いです。いえ、役者つながりでキャラクターにあれこれ言うのは品が無いかもしれませんが、今回はアニバーサリー作品ですからご容赦ください。
単話のゲストキャラクターではなく、今後もしばらく出番がありそうなのが嬉しいです。お気に入りのキャラクターがいるというのは、作品を追うモチベーションになります。
来週以降も、常夏総理の活躍が楽しみです。
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