死神の目が欲しい。
急に何を言い出すかと思われるかもしれませんが、欲しいのです。
そもそも死神の目が何かわからない? おやご存じないですか。
社会現象にもなった漫画「DEATH NOTE」に登場する用語なのですが……ああ、そうですね。あれももう20年前の作品ですか。光陰矢の如し。行員金庫荒らし。
ざっくりと説明するのなら、作中に登場する「デスノート」は名前と顔を知っている相手の名前を書くことで任意の方法で死に至らしめることのできるノートです。
そして、そのノート1冊に対して1人の死神が憑いています。
その死神を相手に、自身の残りの寿命を半分にする代償を払って「死神の目」の能力を与えてもらう取引を行うことができるのです。
この「死神の目」ですが、顔を見た相手の本名がその人物の頭上に浮かんで見えるというものです。殺害に顔と名前の情報が必要になるデスノートを用いるにあたって、圧倒的な情報アドバンテージを得ることのできる特殊能力です。
そんな死神の目がほしいのです。
いえ、ノートはいりません。殺したいと思う相手がいるとして、超常の力に頼るのはよろしくないです。憎らしく恨めしい相手であっても、自分の手で殺められないのなら、それは身の丈に合わない殺人です。それはよろしくない。なので、ノートはいりません。
ただ、目の取引だけをしたいのです。
わたしは人の顔と名前をろくろく覚えられません。しかし、業務上はたくさんの人と関わって、顔と名前を判別しないといけません。それができないので、「仕事ができない」のです。
担当するお客様がおよそ200人。そのそれぞれに家族や他職種といった関係者が存在しているのです。そのたくさんの人間を覚えて見分けるのは、わたしには無理です。
しかし、辛うじて、名前を聞けば(あるいは文字情報として見れば)どこに住んでいてどんなサービスを使っている誰なのかを思い出すことはできます。名前さえわかれば、だいぶ気楽です。ですが、「ふつう」の皆様は他人の名前と顔を覚えられるようで、初対面時に挨拶をしたのなら、次回以降は名乗ってくれることはそうそうありません。なので、話している内容から、相手が誰なのかを推測しながら接するしかありません。このとき、相手の名前が分からない以上、二人称を用いない会話をするというのが大変です。
そんな悩みを解消してくれるのが、死神の目です。
顔を見るだけで名前を把握できるのなら、コミュニケーションが格段に円滑に行えるようになります。顔を見れば相手が誰なのかわかるなんて、まさに「世界が変わる」というものでしょう。これがあるだけで生きやすくなります。寿命の半分を払う価値があります。
寿命の半分という対価も魅力的です。
寿命〇〇年分という指定ではない為、生きている限りは何度でも取引を行えます。ライフポイントが50でも残っていれば発動できる《神の宣告》のような気軽さですね。
また、取引によって寿命を縮められるということ自体もメリットであることは言うまでもありません。得られる能力も、支払う対価もメリットになり得るのなら、なにを躊躇することもありません。とっても欲しい死神の目。
ということを、ふいに思ったという話でした。
「ジャンプ漫画に登場する超能力でひとつだけ習得できるとしたら?」と問われて最優先で選ぶものではありません。しかし、対価を払う取引に基づいて得るものという部分に信用がおけるので、なにも労せず授けられる超能力よりはこういったものが好ましいですね。
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