この世には、目には見えない闇の住人たちがいる--。この冒頭ナレーションで始まるアニメ版ぬ~べ~に親しんだ幼少期でした。レンタルビデオ店でよく借りていたのを覚えています。家の中のちょっとした物陰が異様に怖かったのは、ぬ~べ~で出てくる霊や妖怪の怖さに一因があります。まあ、半分以上はシバシバ(アニメ版のキョロちゃんのあいつ)のせいなのですけど。
大人買いというものができるようになり、原作コミックをようやく読んだのは20歳を過ぎてからでしたが、よい歳をして夜のトイレに行けなくなるぐらいには怖い回もありました。単話完結の話がほとんどで、ブラックジャックのような読後感という印象があります。スピンオフや続編の単行本も読んで、現代版はたもんばにガッカリしたり、怪人Aは相変わらず正体不明の怖さがあったり……。あと、ゆきめは永遠のジャンプヒロインだと思っています。
実写版? はて、そんなものありましたっけ。タイトルが同じな別物には心当たりがありますが。
昔から好きな「地獄先生ぬ~べ~」がこの令和の世に再びアニメ化されました。これを観ないという選択肢はありません。さっそく視聴しましたので、軽く浅い感想でも残そうかと。
変わった部分がたくさん
特に前情報を仕入れずに視聴した為、少し驚きましたが、時代設定が現代になり、舞台や各キャラクターのデザインが変更されていました。声優も、ぬ~べ~と玉藻以外は変更になっています。 原作からの時代設定・デザイン変更はありますが、原作を大事に扱っているのが感じられて、実写版とは雲泥の差です。OVA以来に原作指定の髪色の玉藻が動くのを見られて新鮮でした。
比較的近い時期(数年単位)に再アニメ化したジャンプ作品といえば、「シャーマンキング」が思い浮かびます。あちらは、カットされたエピソードはあったものの、過去のアニメ化で果たせなかった「原作の最終回」までを描く「原作通りのアニメ化」でした。ファンとしてはとても嬉しいものです。特に、恐山ル・ヴォワールを劇場版のようなクオリティのアニメで観られたのがよかったです。
やや話は逸れましたが、原作通りの再アニメ化をしたシャーマンキングと違い、新アニメ版のぬ~べ~は原作や旧アニメ版とはまた違ったものになりそうです。未知のぬ~べ~を新たに観られることにワクワクします。死ねない理由がまたひとつ増えましたね。
「この世には」で始まるお馴染の冒頭ナレーションがなかったり、アイキャッチの「ぬぅ~べぇ~」の声がなかったり、少し寂しさを感じる部分はありますが、なにも旧作に寄せるばかりがファンサービスではありません。新しいものには、新しさを期待します。……と言いつつも、「バリバリ最強No.1」が流れた時や、耳に馴染んだ「うちゅうてんち よがりきりょう……」には「おお!」と盛り上がってしまいましたが。
原作から変わった世界に意味はあるのか
「原作を読んだら、生徒たちが大人っぽかったので、実写化に際して舞台を高校にしました」という旨の横暴を働いた実写版でしたが、それ以外も含めて好き勝手にいじくりまわしたのがファンとしては面白くありませんでした。
新アニメ版についても、少なくとも時代設定は変わっています。これが単に「時代にあわせた変更」なのか、なにか作劇上の仕掛けがあるのかと益体もないことを考えています。前者でも十分に納得します。おかげさまで、「新しいぬ~べ~」を見られるわけですし。
もし後者なら、それはもう拍手喝采スタンディングオベーションとなること請け合いです。たとえば、ぬ~べ~が90年代からタイムスリップでもしてきたというのなら、スマホひとつ使えないことにも「なるほど」と思えます。ぬ~べ~は元からそんな感じ? まあそういう考えもあります。
枕返しとかチャブクロとか、平行世界的なものを作れそうな妖怪の設定もあることですし、時代設定が変わったことに何らかの理屈がつくかもしれません。
制作は東映アニメーションではない
現代作画・現代キャラデザ・現代設定でのシリーズタイトル、そしてオカルト・ホラー強めのアニメ化ということで、なるほどなるほど、「ゲゲゲの鬼太郎」6期や「デジモンゴーストゲーム」的な位置づけなのねと思って観ていました。
しかし、確認してみれば、それら2作と違って、新アニメ版のぬ~べ~は東映アニメーション制作ではありません(旧版と共通するスタッフはいます)。新アニメ版を制作しているのは、スタジオKAIです。不調法ながら、聞き覚えがなかったものでインターネット検索に頼りましたところ、「風都探偵」のアニメ版などを制作した所と知れました。つまりは、仕事に信頼がおけるということですね。この先も安心して視聴できそうです。
ぬ~べ~はいつだって「僕たち私たち」の先生なんだな、と
新アニメ版の視聴に備えて、旧版を何話か摘んで視聴していました。配信サービスは便利なものです。レンタルビデオやレンタルDVD、配信サービスで繰り返し視聴していたわけで、セリフをそらんじることはできずとも、「ぬ~べ~の声」にはよく慣れているつもりでした。
ああ、しかし。新アニメで生徒を守ろうとする「ぬ~べ~の声」を聴いて、懐かしさだとか嬉しさだとか心強さだとか、色々な感情が浮かんできて少しだけ涙ぐんでしまいました。疲れていたのかもしれません。守ってくれる誰かの存在を感じて安心してしまったのかもしれません。
漫画・アニメのキャラクターである以上、ぬ~べ~がわたしの担任の先生だったことは当然ありません。ただ、心の先生ではあったのでしょう。あの頃と変わらないような、少しだけ変わったような、でもやっぱり芯の部分は変わらないぬ~べ~は、いつだってあの頃の子どもたちの先生でいてくれるのだな、と感じ入ってしまいました。
3話以降も期待
掴みはバッチリというやつで、3話以降も継続視聴したいと思わせてくれる作品でした。とても楽しみです。今期の毎週の楽しみがひとつ増えて、わたしは嬉しいです。懐かしさから読み直したくなってきましたので、時間があれば、また原作コミックを引っ張りだしてこようかと思います。
リメイク作品に忌避感がある方も、とりあえず1話2話だけでも視聴してみて頂きたいです。仮に、話や作りに気に入らない部分があったとしても、きっと懐かしい気持ちになれます。ぬ~べ~は変わらず、強くて優しい先生でいてくれますから。
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