黒い羽のクピド

遊戯王





 妻との間でたまに出る話題でBFブラック・フェザーに足を向けて寝られないね」というものがあります。

 何の話かといえば、遊戯王の話です。「またか」とお思いでしょうが、まあお待ちください。夫婦間でこの話題が出るのは、お互いに遊戯王ファンだからということだけが理由ではありません。我々の馴れ初めにBFが関わっているからこそ、定期的に思い出されるのです。

 今でこそ、決闘デュエルの相手になってくれる妻ですが、交際当初は遊戯王OCGのルールについては、あまり知りませんでした。表側守備表示でモンスターを召喚したり、通常や速攻といった魔法カードの分類がわからなかったり、シンクロやエクシーズといったエクストラデッキからの召喚法も「カードは知ってるけど出し方は知らない」というような状態でした。

 一方で、妻もまたわたしと同じく、原作・アニメのファンではありましたので、無興味というわけではなかったのです。そこで、「共通の趣味」であり「恋人同士のコミュニケーション」として適したものと思い……あと、ただわたしがそうしたかったのに付き合ってもらい、デッキを渡してルールを教えさせてもらいました。
 その時にチュートリアル用のデッキとして採用したのが、【BF】でした。妻は、ドラゴンと鳥が好きです。なので、ドラゴンも鳥も属しているカテゴリを選びました。手ごろなデッキケース、妻の好きな色味のスリーブと一緒に渡し、暇があればカード遊びに付き合ってもらっていました。
 ↑の画像のとおり、10年以上経った今でも、現役でカードもケースもスリーブも使ってくれています。モノを大事にしてくれるというのは、贈り甲斐があります。

 カードとの相性がよかったのか、デッキの内容がよかったのか、練習ではありましたが、どちらかが一方的にはならず勝ったり負けたりの戦績でした。これもまた、よかったのだと思います。負けがこむと不機嫌かつ意固地に妻ですから、均衡のとれたデッキパワーというのは、飽きずに続けてくれる大事ないち要素でした。

 通常召喚と特殊召喚の違い、シンクロ召喚のやり方、《ブラック・フェザー・ドラゴン》は「BF」モンスターではない等……遊戯王OCGの基本ルールからややこしい部分まで、色々と楽しく覚えられたとのことです。


 恋人同士という相互の認識だけでは、関係は長く続かなかったと思います。関係の構築・発展において、共通の趣味があり、それを通して互いを知るというのはかなり重要なステップでした。遊戯王だけで繋がった縁ではありませんが、しかし、このBFデッキの存在はとても大きいものです。渡したデッキがBFのそれでなければ、また違った結果になっていたかもしれません。
 我々にとってのキューピッドの翼は黒かったのです。


 そんなことがありましたので、「BFに足を向けて寝られない」のです。カードを通して恋仲が深まり、いずれ夫婦になる……「人はそれを絆と呼ぶ」のかもしれませんね。

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