インターネットで検索して聞きかじった(読みかじった?)程度の話なのですが、大量の情報を見聞きして、脳がそれらを処理しきれない状態を「脳疲労」と呼ぶそうですね。この解釈があっているのかはわかりませんが、この記事内ではそういった状態を指してこの言葉を使用します。
わたしは情報処理の容量が、そう多くはありません。情報を注がれると、割とすぐに処理の器からあふれ出します。
一方で、常に注意力散漫で周囲のあちらこちらに気が散っている為、周辺の音や声や会話をほぼ常に拾っています。また特別に聴力に優れるわけではありませんが、妻に聞こえない音を感じて「耳いいねぇ」と感心されることがあります。アパート前にバイクが停まる音を聴きとって「郵便きた!」といって玄関に向かい呼び鈴に即応したりします。
それらが合わさるので、聞こえるように話しているのか陰口のつもりなのかわからない悪口やからかいが耳に入って恨みを深めることも多かったです。
あとは、わたしが参加していなかった会話の内容に言及して「あれ? ○○くんに伝えてたっけ?」という反応を返されたりします。盗み聞きしているわけではありません。方々に意識が向いてしまうので、聞くつもりでなくても耳に入るのです。
わたしが聖徳太子ならハーブの香りがするのでしょうが 複数人の会話が耳に入ろうとも聞き分けて処理できるのでしょうけど、残念ながらそうではありません。耳に入る情報は役立ちそうなものを残してなるべくカットするしかありません。自力で。そんな殺生な。摂政だけに。
以前の職場の上司がですね、非常にひとりごとの多い方だったのですよ。その上、お互いに日本語で会話しているのに言いたいことが伝わらず、他部署からわたしに「××さんには困ってしまう」と雑談を振られることもありました。わたしも困っていました。
日常の仕事で報告・連絡・相談・伝達がうまくいかずイライラするのに加えて、普段からのひとりごと過剰供給で「脳疲労」を感じていました。
辞めた職場の恨み言を言いたいわけではありません。次の話題の前座です。
ここ数か月で入社した同部署の新人が、またひとりごとの多い方なのです。朝から晩まで発生し続けて疲れないのかと疑問に思いつつ、観察していると声に出すことで考えを整理する向きがあることも理解できます。
ただ、わたしには毒です。デスクに就いての事務作業中でも、不慣れな彼女の補助で現場に同行した際の作業中も、ずっとひとりごとを流し込まれてしまえば、わたしの乏しい処理能力はすぐにビジーになってしまうのです。
同じく人間の肉声でも、歌はよいです。リリンの生み出した文化の極みですし。
初めて聴く歌や耳慣れない歌は対象外です。歌詞を覚えないまでも、ある程度の回数を聴いたことのある歌であれば、これを聞く(『聴く』ではなく)ことでかえって集中できます。歌も情報である以上は、脳の処理容量をある程度使用するものとは思います。しかし、その「ある程度」に集中することで、その他の周囲の会話や悪口といった有意義無意義ごちゃまぜの情報ビュッフェに気が散りづらくなります。
だから、歌はよいのです。
事務所内でもイヤホンなりヘッドホンなりを使用して歌を聴ければよいのですが、もちろんそんなわけにはいきません。自分の考えを整理する為のひとりごと垂れ流しは(おそらく)無意識のものなので許されますが、業務中に意識的に耳を塞ぐことは許されません。
高校の頃を思い出します。先生の都合でまるまる1時限が自習になったときのこと。自習だからわからない部分を教え合うという体で雑談を始める多数のクラスメイトたち。或いはそもそも勉強にかこつけることすらせずに私語を始めるクラスメイトたち。当時の自分にとっても当然に雑音以外の何物でもありません。
なので、早々にイヤホンを着用して、音楽を聴きつつ自習していたのです。そうしましたら、先生に咎められました。自習の時間に自習を放り出して私語をする生徒でなく、その雑音に耳を塞いで自習をする生徒のほうが「間違っている」という裁定でした。まあ、クラス内ヒエラルキーの最下層にいる生徒なのですから悪と見なされても仕方ありません。正義である上位層が私語をするのなら、その正義を拒むのは悪でしょう。
などと。納得のいかない嫌なことを思い出してしまいました。
理屈は違いますが、同僚のひとりごとに耐えなければいけないという状況はやはり当時を連想させます。
「気が散るからひとりごとをやめてください」
と言ったところで、嫌な顔をされるだけです。このご時世ですから、エニシングハラスメントに該当する可能性もあります。わたしの思う「ふつう」のラインは普通でなく、大丈夫と思っても相手に嫌な思いをさせるということに留意が必要であると、心のコミュニティノートも言っています。
ただ「ふつう」に振舞うだけで他人を不快にさせるわたしと、無意識にひとりごとを垂れ流し続けて他人(少なくともわたしには)に迷惑をかける彼女。立場にそう違いもありません。わたしが何かを言える筋がありません。
そうして今日も明日も、わたしの脳疲労は継続するのでした。
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