テレビを見る時は部屋を明るくして、離れて見てね、というお馴染のフレーズがあります。
いつの頃からかと言えば、ポリゴン……ではなくピカチュウがオイタをしてからですね。いえ、それは本題では無いのです。
「離れて見てね」と言われていたテレビから「離れて」見ることがなくなったのはいつの頃からだろうか、と。こういう話をしたいのです。
厳密にいえば、まったく見なくなったわけではありません。
鳥山明氏の漫画の中にあった「テレビ見る? 映らないけど」というギャグではありませんが、テレビのモニタそのものは日常的に見ています。そこに地上波のテレビ番組を映すことが極端に少なくなっていることです。
テレビ放送を見なくなったのなら、何故にテレビをいつまでも置いているかといえば、各種動画配信を映すのに重宝しているからです。ただモニタとして使用している状態です。
まあ、配信の無いような番組を見ることはあります。何かしらの年末年始の特番ですとか。
つまりは、365日のうちの、わずか数日だけの活躍ですね。
妻はわたしよりは多用途で扱っています。
配信を見るほか、ゲームをしてみたり、なんと地上波の番組も見ます。見ます、というか指定した番組が始まるとテレビの電源がつく機能を利用して目覚まし時計代わりにしているということですが。
やや回り道をしてしまいましたが、わたしがテレビを見なくなった理由を思い出していきます。
あれはおそらく、新社会人として忙しくしていた頃のこと。外に出て働けば、通勤やら労働やら仕事道具の買い出しやら必要資格をとるための研修やらと、何かと時間をとられてしまい、ゆるりとテレビを観る時間が無くなること自体は自然なことです。
そういった生活の中だとしても、娯楽としての優先度が高ければ、録画をするなり何なりでテレビ番組を楽しむという選択はあります。ですが、わたしはそれをしていません。
(特撮ドラマやアニメは配信で見たりしていますが)
テレビ番組、特にバラエティ番組を見る気がなくなったきっかけについては、ふたつ覚えています。
ひとつは「スカッとジャパン」となる番組です。再現か創作かはわかりませんが、「理不尽な目に遭っている視点人物が何かのきっかけで、自分を虐めたり貶めていたりした人物を見返す或いは叩きのめす」というドラマを放送していたものと記憶しています。このドラマが、わたしとしては肌にあいませんでした。強い言葉を使うのなら、気色が悪いと感じてしまうものでした。
自分がされて嫌なことを相手にやり返す。自力でなく、「親切な」他人の威を借りて成敗を気取る。虐める、貶める、辱めるという点を見れば、相手と同じようなことをしているのに、まるで視点人物が正義で相手は悪であるというような描き方。
人にはそれぞれに「正しさ」があるのです。助勢を得て強気になって、夥しさという正しさを帯びて、まるで自分が正義であるかのように振舞う。お前らはいつもそうだ。物事の一面しか見ない。嫌なことをされたから嫌なことを仕返す権利があるとどこまでも増長する。他人を痛めつけるその身を見れば、お前が憎む相手と同じ醜さをしているというのに。本当に気色の悪いことです。
……という感情を募らせてしまい、「こんなものを見るのは嫌だ」という気持ちになりました。
もうひとつは「ニンゲン観察バラエティ モニタリング」のある回に覚えた不快感です。こちらは、言ってしまえば「ドッキリを仕掛けて、無辜の民の反応を見て笑う番組」というようなものでした。この番組のやらせの有無はわかりません。もしかしたら、対象はまったくの「無辜の民」ではないのかもしれません。が、そもそもドッキリ番組というのが、悪趣味ないたずらを仕掛けて、右往左往する人々を陰から嗤うという陰険なものという印象があります。
悪趣味さはさておき、特に不快だった当該回では、渡辺直美氏が保育園だったか幼稚園だったかの1日保育士? として振舞い、子どもたちの反応を見るという「モニタリング」でした。
渡辺氏と子供たちの交流は非常に微笑ましいものだったのですが、場面場面につけられたナレーションが最悪でした。渡辺氏の体型を揶揄するようなナレーションばかりで、「他人の外見を笑いの種にする」という最低最悪の笑いの取り方だったのです。自分で体を張るでもなく、一見して目につく他人の外見の特徴を以て「笑い」にしようとする技量のなさ。何も考えていないのか、あるいは考えられないのかわかりませんが、中傷を「いじり」という言葉に置き換えて正当化しようとする粗野な性根が透けて見えるようでした。
ひとが中傷されている様を見て笑えという番組側の悪趣味さと傲慢さが気持ち悪かったです。
数年経った今でも嫌な記憶が残るほど印象深いふたつの番組のおかげで、今でも「バラエティ番組は見ても嫌な気持ちになるだけ」という認識でいます。
見ても嫌な気持ちになるのなら、わざわざ時間を割いて見る気など起きません。
テレビ番組であるのなら、雰囲気を明るくして、他人を踏みつけにすることから離れて制作をして頂きたいなあ、と思います。
コメント