今回は、Vシネクスト 暴太郎戦隊ドンブラザーズVSゼンカイジャー内での描写についての考察です。ネタバレを含みますので、ご了承ください。
該当シーンについてはあくまで通過点で、そこにどのような「なぜ」があっても、最終的な結果は変わりません。考察とは言いますが、「どのようにでも捉えられる」に落ち着きます。

Vシネで描かれたタロウの死
「暴太郎戦隊ドンブラザーズ」の作品内で、戦隊のレッドであるドンモモタロウ……に変身する桃井タロウは、基本的に何でもできる完璧超人です。彼は、何でもできるが故に、他人の気持ちに寄り添うことが苦手だったり、超人性ゆえに周囲から疎まれてしまうこともありました。
そんなタロウが「お供たち」やライバルとの関りを経て、彼なりの成長を遂げていくのが、ドンブラザーズという作品でした。
完璧で無敵のタロウですが、戦いに敗れることもあれば、幼少期の離別に起因する人間的な弱さもあり、さらには彼を象徴する文字通りに「致命的」な弱点もあります。それらの弱点もあり、TV本編で何度か死んだことのある桃井タロウですが、その度に息を吹き返してきました。
本編後の物語を描くVシネ作品である「暴太郎戦隊ドンブラザーズVSゼンカイジャー」にて、今作の怪人である機界鬼との戦いに敗れて落命します。のちに復活はしますが、仲間たちにより、いったん葬儀が執り行われていて、明確な死として描かれています。
桃井タロウはなぜ死んだのか
ここで考えたいのが、タロウはなぜ死んだのかということです。機界鬼との戦いにより死亡しているのですから、「怪人に殺された」と考えるのが筋ではあります。しかし、あのタロウが、たかが怪人ひとりにそう簡単に倒されてしまうものでしょうか。
わたしが彼をひいき目に見ているということは否定しませんが、それでも、オンリーワンであるタロウが易々と命を奪われることには違和感があります。この違和感を拭う為に、それらしい理由付けをして、個人的に納得したいのです。
単純に機界鬼が強かった
可能性のひとつとして考えるべき可能性が、交戦した機界鬼が単純にタロウよりも強かったという点です。チームワークが乱れていたとはいえ、ドンブラザーズのほかのメンバーを圧倒していたことから、機界鬼には一定の強さがあるものと目されます。
◆変身者の大野が戦いに慣れていた。
◆大野のリベンジのモチベーションが高かった。
◆「機界戦隊」をモチーフとしている怪人だから特別枠。
まず、ヒトツキ(今作の怪人のこと)への変身経験が豊富な一般人・大野が変身者でありましたから、戦い慣れていた部分はあると思います。同じく複数回ヒトツキになったことのある雉野を打倒する際には、後輩の王様戦隊の助太刀が必要でしたし、回数を重ねた分だけ怪人としての強さは増すのかもしれません。
また、大野は直前に母との死別を経験しており、これまで以上の士気でリベンジを挑みにきていました。気合の入り方が違います。リベンジに燃える大野のノリは、当時落ち込んでいたタロウを凌駕するものだったでしょう。戦いはノリがよい方が勝つものです。
そして、怪人としても、作中で特別な位置づけである(かもしれない)機界戦隊をモチーフにしていることが、機界鬼の強さを裏付ける要素であると考えます。メタ的にも、Vシネ作品という特別編のボスキャラですから、強敵であったことは間違いないでしょう。
これらの理由で、単純に機界鬼が復帰直後のタロウよりも強かったという可能性はあります。
タロウは既に死んでいた
一方で、機界鬼との交戦前にタロウが既に死んでいたというのが、わたしの推したい説です。
◆タロウは嘘をつくと死んでしまう体質。
◆交戦前のタロウのセリフが「嘘」だったのではないか。
さて、桃井タロウは嘘をつくと死んでしまうという設定があるキャラクターです。TV本編でも、何度かこの要因で脈が止まっています。嘘をつけない性格ということを表す比喩ではなく、実際に死んでいます。直後に蘇生して事なきを得ていますが、嘘をつくとタロウは死ぬのです。
もしかしたら、今回もこの設定により、タロウが死んでしまったのではないかと考えています。
タロウはドンブラザーズの脱退を宣言した面々を逃がす為に、機界鬼に対して「こいつらはもう、ドンブラザーズではない」と言っています。これが嘘となってしまったのではないかと思うのです。
タロウは口ではそう言ったものの、内心では彼らのことをドンブラザーズの仲間であると認識していた為に、その言葉が嘘になってしまったという可能性はあるでしょう。仮に脱退したとしても、タロウにとってはドンブラザーズだったということです。
なので、その後に続く変身、「逃げろ、みんな。自分の人生を生きろ!」という発言、機界鬼との戦いの間、脈が止まった状態で動いていたのではないでしょうか。彼は桃井タロウですから、短時間なら死んだまま戦うこともできるでしょう。彼なら、仲間の為にそれぐらいのことは出来るでしょう。
脈が止まった状態で戦ってはいたものの、機界鬼の攻撃で吹き飛ばされた先で、ついに息絶えてしまったものと考えます。
あるいは、事実と異なることを口にしたという意味で、嘘になってしまったという場合もあるでしょう。タロウの内心の問題ではなく、事前に宣言していた脱退がなされていなかったために、実際には「こいつらはもう、ドンブラザーズではない」という言葉が嘘になってしまったという可能性です。
面々がドンブラザーズの脱退の意思表明をしていたものの、マスターが処理を行っていなければ「ドンブラザーズではない」と言ったのに「ドンブラザーズである」という事実が存在してしまうわけで、タロウの意に反してこれが嘘となり、死んでしまったのかもしれません。
個人的にはタロウの成長ゆえの死と捉えたい
個人的には、タロウにとって「みんなはドンブラザーズの仲間である」という内心があった為に、発言が嘘となり死んでしまったという説を強く推したいです。TV本編での1年間を通して、タロウからメンバーへの認識・感情が変わったというのを感じられます。
仲間ができたことで、完璧超人に弱点が増えるというのは、弱体化ではなく進化だと思うのです。ひとりでは手が届かないことがあっても、他人と手をつなげば、どこまで届く腕になるでしょう。大野=機界鬼が強かったのは前提として、タロウの敗北と死は、彼の成長ゆえのものだったのではないでしょうか。
……まあ、作品柄のお約束や伏線もあり、その後にタロウは復活しました。復活に至る経緯に死因は関係ありませんので、視聴者の解釈によってどのように捉えてもよいシーンではあります。なので、あくまで個人的に好む解釈として、上記の説を推したいという話です。
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