妻の手は「ふつうサイズ」

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 妻がのびをしたりなんだりで、手をパーの形に開いているのを見かけると、こちらも手をパーにして、その手のひらに重ねます。そうしたあと、大概の場合において「手ぇちっちゃ」と言います。
 
 交際し始めの頃、手をつないだ際に、自分のものとはまるで違う「女の子の手」に対する感想として自然に漏れた言葉が元々のものでした。慣れてくると、これも定型会話のひとつになりまして、手のひらを合わせるたびに「ちっちゃ」と口に出します。

 これに対する妻の返しは「ふつうサイズ!」や「そっちがおっきいんだよ」が主です。
 先ほど、いつも通りに「ちっちゃい」と言ったところ「そんなに変わんないでしょ。ほらっ、ほらっ」と言われました。ほらと言われましても、大きさの違いが覆るわけでもなく。

 手を重ねたときに、妻の指先がわたしの指の第一関節から少し出るぐらいに指の長さが違います。そして、妻の手がちょうどすっぽり収まるぐらいの大きさの違いがあります。しかし、実際のところ、違いはあれど、「ふつうサイズ」ではあると思います。
 わたしと妻の間におよそ20cmの身長差がありますので、自然、手足の長さや大きさも比例して差が存在します。わたしと比較すると小さく見えるというだけで、妻ぐらいの身長の女性の手としては、多分ふつうの大きさです。わたしにとっては、わたしの手が「ふつうサイズ」で、妻には妻の手が「ふつうサイズ」というだけのことです。
 
 些細なことではありますが、こうして手を重ねて「ちっちゃ」「ふつうサイズ!」という定型の会話をするスキンシップに幸せを感じます。
 特にこれからの時期は、ぴったりくっついて横に座ったり、あるいはハグをしてみたりすると、ほぼ間違いなく「暑い!」と文句を言われてしまう季節です。手を重ねたり、意味もなく背中をさすったりといった形にスキンシップの割合が多くなってきます。
 いえ、「暑い」と言われるのも一興ではあるのですが、妻が暑いということは、わたしも当然暑いので……。

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