実写版ブラック・ジャック(2024年版)感想

その他





冒頭文

 おはようございます。例年通り、桜が散って以降の長めの五月病期間にあります典藻のりもキロクです。
 しかし、昨日のイベントの参加ですとか、あれやこれやと、よいことも続きましたので機嫌は悪くありません。

 ですので、はい。
 事前情報で実写版ブラック・ジャックに文句を言った責任を果たす為、本日のテレビ放送にてリアルタイム視聴をさせて頂きました。
 文句を言う以上、しっかり作品を観ませんとね。
 そして、せっかく観たのなら感想でも書こうかと思いまして、今回の記事を作成する次第です。

 以下、よかったところとよくなかったところの感想です。

よかったところ

特撮番組的な良さ

 まず、冒頭、薬物中毒者の見る幻覚に現れた馬……のバケモノのCGがとてもよかったですね。
 非常に恐ろしかったです。掴みはバッチリ、というやつです。
 獅子面病の特殊メイクもよかったです。極めて自然であり、なぜか「シン・仮面ライダー」を彷彿とさせるクオリティです。

 CG合成や特殊メイクの出来は素晴らしく、上記の記事で悪し様に評した実写版「地獄先生ぬ~べ~」に見習ってほしいところです。
 ただ、「ブラック・ジャック」に特撮的な要素を期待してはいなかったので、本筋の外の評価点となります。

安心感、しかし

 名作漫画のストーリーを下敷きにしているので、ハラハラする場面はあれど、その中に「でも先生なら何とかしてくる」という安心感があります。
 感情が揺り動かされることを嫌うらしい「いまどきの若い方」にはよい塩梅だったのでは。
 
 ……と思っていましたが、しかし。

ピノコ

 ピノコがまあまあピノコだったのは、よかったところだと思います。
 アッチョンブリケもありました。
 ただの不思議な子にならないよう、申し訳程度に「ピノコ」としての現状に至るまでの口頭説明もありました。口頭なので原作なりを読んでいないとイメージはつきづらいかもしれないとは感じました。

 また、ピノコ感はそこそこですが、子役がしっかり仕事をこなしていてよかったです。
 つい最近まとめて視聴した「仮面ライダーガッチャード」に滅茶苦茶すごい子役が出演しているので、ピノコ役の女優さんの輝きが霞むという、ごく個人的な問題はありました。

高橋一生氏は好印象

 事前情報の画像にて、外見の違和感も薄く、まあブラック・ジャックだなという印象しかなかった高橋一生氏の演じる今回のブラック・ジャック先生ですが、こちらはとても良かったです。

 浅い感想ではありますが、どことなく2004年のアニメ版を思わせる声質と間の取り方がよかったです。
 何度かの実写化やアニメ化を経ている作品ですから、既についているイメージに近い演技であるのは、スッと情報が頭に入るのでありがたいです。
 
 典藻はテレビどころか、配信でもアニメ・特撮以外をろくに見ないので高橋氏の活躍は「シン・ウルトラマン」ぐらいでしか知りませんでしたが、素敵な役者さんですね。
 特に声がよい。うっとりしてしまいます。

CMが見れた

 普段テレビ放送を見ないので、久々にテレビコマーシャルを見て、何だか新鮮な気持ちになりました。
 ああ、そういえばテレビドラマはこういう「すきまの時間」があるんだったなあ、と。

キリ子の情報先出し

 事前情報が公開されたときに最も話題になっていたドクターキリコのキリ子化ですが、これを先に知って視聴したおかげで、がっかり感が軽減されました。
 「大怪獣のあとしまつ」の悪い前評判を聞いてから観たらそんなに酷くはなかったと感じたのと同じ現象ですね。いえ、典藻は「あとしまつ」にはそれなりの良さがあると思っている派ですが。

 変にサプライズ要素として隠さず、事前に公表されていたのは、或いは最善手だったのかもしれません。

よくなかったところ

琵琶丸

 なんと驚くことに原作キャラクターである琵琶丸が登場しました。
 ……が、ドクターキリコがキリ子になった以上に改変がなされ、別人と言って差し支えないキャラクターでした。

 歌手として設定された今回の琵琶丸、便宜上、BIWAMARU2024と呼びますが、彼の歌う「一夜」という曲のタイトルの読み方が「いちや」なのか「ひとよ」なのかがファンの間で論議されているという設定でした。
 この「一夜」の読み方は終盤にBIWAMARU2024本人の口から発音されるのですが、個人的にこれに少々の文句をつけたいところです。

 「一夜」を「ひとや」すなわち「ひとや」と呼んで地獄を連想させてほしいという中二病心が騒ぐのです。
 
 ドラマ全体の端々に、「続編もつくるぞ」というような雰囲気を感じさせるところがありまして、それであればBIWAMARU2024にも琵琶丸の要素として胡乱さがあってもよかったのではと思う次第です。
 しかし、「脚本家による原作改変」が話題になっていたにも関わらず、キリ子のみならずBIWAMARU2024まで。やはり手塚先生が「だいぶ前に死んでるから平気」という認識なのでしょうか……?

風刺やメタ発言

 まあ大衆向けの作品には珍しい事ではないかもしれませんが、現代人や社会、政治の在り方を揶揄したような場面がありました。

 事故現場で救助を手伝うでもなくスマートフォンにて撮影を行う野次馬とそれへ皮肉であったり、ドリルを用いて汚職の証拠となるデータを破壊した実在の政治家への批判であったりという場面です。
 原作においてメタ発言や皮肉や風刺が少なくなかったとはいえ、キリ子やBIWAMARU2024のような歪曲キャラクターを生み出しながら、他人の原作を踏み台にして、特に実例を指した政治批判というのは少々下品なのではと感じました。
 もちろん、典藻もドリルでのデータ破壊には「漫画かよ」とツッコミを入れたくなる気持ちはありますが、それを他人の作品で表現するのは卑劣なのではないかと。

 そして、そんな歪んだ「ブラック・ジャック」の物語を描く漫画家として手塚という名前が用いられたのは、そこはかとない気持ち悪さを感じてしまいました。
 まあ、やってることは「セイバー+ゼンカイジャー スーパーヒーロー戦記」と同じなので、あちらを評価しつつ、こちらを腐すというのは、先入観による好き嫌いが大きく影響していることは否定しません。

やはりキリ子はキリコではなかった

 典藻は別にドクターキリコの熱心なファンではありませんが、今回のキリ子はキリコではなかったと思います。
 典藻の中のキリコ像とは違うという意味合いですが。

 本物のキリコなら、獅子面病の患者から安楽死の相談をされたとして、その検討すらもせず門前払いするのでないかと思うのです。
 傷病苦で死にたくても死ねないという状態とは異なりますし、本物キリコなら「この患者を治せるだろう医者がいる」と知っているでしょうから安易に死を処方することはないのではないかと。
 まあ、にわかファンの戯言です。


 また、女性設定であることにそこまで大きな意味はなかったかと。
 眼帯と前髪で隠している顔面左に傷痕があったことから、獅子面病の女性からの「こんな顔になっても生きていける?(意訳)」という問いかけに対して、同じ女性として顔に大きな傷がある立場から返答したということで、作劇上まったく意味がなかったわけではありません。

 しかし、上記の通り完成度の高い実写ブラック・ジャックのライバルとしては未熟さが見えて、ライバルキャラとして力不足であるように感じてしまいました。
 その力不足感を覆して、キリ子の思想にある程度の正当性を持たせる為か、下記のオチがついたのかと思うと、モヤモヤします。

約2時間を視聴してオチがこれか

 ネタバレになってしまうかもしれないので詳細は記しませんが、無情なオチでした。
 少なくともハッピーエンドとは言い難いものです。

 いえ、こういう言葉にできない胸の苦しさは原作でも度々ありましたが、キリ子の安楽死思想を正当化する為に用意された結末なのではないかと邪推してしまいます。
 なんというか、「ブラック・ジャック」っぽい結末として安易に作中人物が弄ばれたようで、苦しいです。

 かつて「魔法少女まどかマギカ」が流行した頃に「こういうのが好きなんだろう?」と大味で雑な「鬱エンド」の作品が乱造されていたのに似た感覚です。おわかりいただけますでしょうか。
 なにより、日曜の夜という貴重な時間を2時間使って苦い結末を見せられたのが、ただでさえ翌朝からまた仕事という気持ちの沈み込みに追い打ちをかけられたようでテンションだだ下がりです。

「神になりたい」

 原作にあった要素かどうかわからないのですが、今作のブラック・ジャック先生は救えなかった患者たちの遺骨を加工した彫刻を自宅に置いています。
 ブラック・ジャック先生に遺体の加工という冒涜的な習慣はあったでしょうか……。
 
 そして、会話の流れでブラック・ジャック先生の口から「とどのつまり、私は神になりたい」「そういうことかもしれませんね」というセリフが吐かれました。
 これはいかがなものでしょうか。
 
 原作における本間先生(ブラック・ジャックの恩師)からの言葉である「人間が生きものの生き死にを自由にしようなんておこがましいとは思わんかね」を思うと、人間を超えて神になれば生き死にを自由に出来る可能性がある=神になりたいというセリフに至るのでしょうか。

 しかし、典藻のなかではブラック・ジャック先生は生命に関してはリアリストで、ピノコらへの弱音としてならともかく、ろくに知りもしない他人に軽々しく上記のようなことを言わないのではないかと思うのです。
 「そういうことかも~」とつなげているので、けむに巻く為の冗談にも思えますが、このセリフは強烈な違和感を覚えました。
 あくまで浅い知識の素人感想ですが。

おわりに

 総評としまして、劇場公開で2,000円払って観たら不満に思いますが、テレビ放送でタダで観るならまあよいかというぐらいの印象です。
 原作が面白いのでよほど変なことをしなければ面白くはなりますでしょうからね。

 



 さて、記事の内容とはまったく関係のない話題なのですが、本日6月30日は日曜日にもかかわらず休日出勤をしてきました。

 事務所にいるのは典藻ひとりでして、冷房をつけるというのも気が引けてしまい、また立地上湿気が多いものでとてもムシムシした中で仕事をしていました。
 サウナ状態です。サウナ入ったことありませんが。

 短時間とはいえサウナに入ってしまいました。
 痩せてしまいますね。いえ、こんなことで痩せられるなら苦労はしないのですが。
 というわけで、万年運動不足で常におなかの肉が余っていますので引き取って下さる方がいらっしゃれば是非ご連絡くださいませ。

 ……と、単独記事にするまででは無いもののどこかに書いておきたかった「休日出勤中の事務所が蒸し暑い」という話でした。あつかった。

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