おじさんはパーカーを着てはいけないらしいという話を聞きました。一次発信を確認していないので、なにがどうしてそのようなことになっているのかは存じません。極端な物言いであることから推察するに、「自分で作った『常識』を押し付ける」ことを生業にしているようなマナー講師の方の発信なのかと考えています。まあ、正解に興味は無いので答え合わせもいたしませんが。
おじさんと言われてしまえば、他人事ではありません。大変ですね。パーカーを着てはいけないとなると、とても困りま……せん。普段パーカーを着ないので。
あれは小学1年生の頃のこと。帰りの会にて担任の先生から、「フードをかぶるとまわりの音が聞こえなくなるから、かぶっちゃダメだよ」と言われてから今日に至るまで、フード付きの衣類を避けるようになっています。我ながら、なんとも極端。
変なこだわりを持つわたしですので、当時からフード付きのものは「なるべく着ない」を続けています。そんなことを知らない祖母や叔母は、幼いわたしにパーカーを買ってくれたりはしましたが。
作業中にフードや首元の紐がなにかにひっかかるといけないということもあり、機能的に見ても仕事に使えるものでもありません。
また、私服で出かけることなんて週に1回あるかどうかぐらいですし、好まない服に出番は回ってきません。ちょっとコンビニに、というような外出の際に羽織れるものが洗濯中でないなどの事情があれば、仕方なく着用する程度です。
なので、パーカーを着れないことに不便はありません。
しいて言うのなら、フード付きの仮面ライダーの仕草のマネができなくなるのがデメリットでしょうか。もとよりパーカーを着ないので、マネをする機会自体ほぼありませんでしたが。
衣服についてわたしが悩むのは、もっと前の段階のことです。
私服としてなにを着ればよいのかわからないということ、ファッションセンスというものがないこと、そのセンスを磨くという向上心もないことです。
「そもそも論」は避けるべきとは思いつつ、そもそもに言及するのなら、着る本人が造形に優れるわけではないのだから、何を着ても似合わないというのはある程度仕方ないとご容赦いただくとして。
私服としてなにを着てよいのかわからない。困ってはいませんし、そんなに悩んでもいませんが、とりあえずわからない。
また遡って、見目に気を遣いそうな中高生の頃のこと。
外出時の私服としては、上下ともに黒無地あるいは柄の目立たない黒いものを着ることにこだわっていました。「毎日世界のどこかで誰かが死んでいるのだから、毎日喪に服すべき」という中二病的死生観の延長からくるこだわりでした。母からは嫌がられましたが、わたしが意固地になっていたら折れてくれました。祖母はずっと嫌な顔をしたままでした。
まあ、中学はともかくとして、高校では休日に一緒にでかける友人が基本的にはいませんでしたので、私服の出番もそうありませんでしたし、同年代の同性が何を着ているかを知る機会もありませんでした。一度だけ、苦節の後に出来た友人たちと高3の頃に秋葉原にでかけるというイベントがありましたが、彼らは他人の服装を褒めも貶しもするような人柄ではありませんでしたから、わたしの黒ずくめも特に何も言われませんでした。
そんな高校の頃は、平日は学校、土日はバイト、たまに一人で或いは家族と買い物等に出かけるというような生活でしたから、おしゃれも必要ありませんでした。デートをするような相手もいませんでしたからね。
私服通学となる大学の頃は……いやまあ、大学の頃は終身不名誉ストーカーになる出来事があったので、加害者の立場ながら関連することを思い出すのが毎度苦しいのですが、スラックスに白いYシャツというのを基本形として過ごしていたように思います。のび太やルパン三世のごとく、毎日似たような服装だった為、この白シャツというのが「彼女」にはストーカーの記号となってしまったと伝え聞きました。申し訳ないことをしましたね。服装に気を遣わないということが、副次的な害になりました。
その白シャツを隠す為に魔法使いか怪盗かといったような外套をまとっていた時期もありました。わたしとしては「彼女」への視覚的な害を無くすためのものでしたが、まあ言ってしまえばコスプレじみた奇抜な格好でしたので、顔見知りでもない学生たちからくすくすと笑われていました。迷走してばかりですね。
このスラックスとシャツという服装選びをしていたのは、「大学には勉強をしにいくのだから、あまり浮かれた格好はしないほうがよかろう」という考えでの事です。Yシャツは白が多かったですが、色付きのものも着ることはありました。ですが、まあ気の利いた服装ではありませんね。
この頃は高校の時に比べれば、サークル活動であったり、妻(当時は恋人と呼ぶべきですが)との外出などで誰かと一緒に出歩く機会もありましたが、洒落っ気のなさに、隣を歩く人に恥ずかしい思いをさせてしまったかもしれません。そういった意味でも周囲に申し訳ない。
お義母様との初顔合わせの折にもスラックスとシャツといった格好で伺ったところ、「そんなかしこまった格好しなくてもよいのに」と言われてしまいました。妻からは「別にかしこまってない。普段からこんな感じ。いざとなったらオレが適当に見繕うから」とフォローを頂いています。※補足:当時の妻の一人称はオレでした。
その後に「いざ」がこないので、特に見繕ってもらうこともありません。わたしの現在の私服も、妻からは特に文句は言われません。ちなみに、妻もそこまで服装に頓着する方ではありませんが、なにを着ても大体かわいいです。わたしから妻への贔屓目ももちろんありますが、服を買う際に「自分に似合うもの」というものを正確に選べているということなのだと思います。これがセンスというやつですか。
そんなこんなの私服事情で現在に至ります。
現在、家にいる間は所々破けた着古しの寝間着、週5~7日は仕事に出る為に日中はほとんど作業着、たまの休みに重い腰を上げて出かける時にはスラックスと変なプリントTシャツというような服装で生活しています。
おじさんという年齢に相応の服装選びなのかは正直わかりません。なにを着るのがよいのかわかりません。いえ、実際的には不便に感じることはないのです。浪費を好む割には随分と衣装が少ないとは自分でも思いますが。
仕事に使っている作業着は頑丈で気に入っています。ポケットも多くて工具やら筆記用具やらを携帯しやすいのもよいです。
服といえば、いつぞやの記事で触れましたが、昔着ていたメイド服が出てきて、今手元にあります。わたしの持っている衣服の中で、弟の結婚式用に買ったスーツの次に高価な衣装です。そして、スーツ以上に着る機会のない服です。
当時、まあ経緯は省きますがメイド服を着ることに決めて、秋葉原の女装コスプレ衣装のお店で買い求めたものです。
今回の記事タイトルは「なにを」着ればよいかわからないというものですが、このメイド服は「いつ」着ればよいかわからないものですね。いや本当に。
でも、かわいい衣装なのですよ。着るのがわたしであることを除けば、とてもかわいいのです。……スタイルの悪いマネキンになったつもりで、顔を隠せば「衣装に着られる」ことは可能かもしれませんね。
以上、パーカーを着れないのは別に困らないけれど、そもそも私服でなにを着ればよいのかわからないという話でした。
コメント