怪人冥利に尽きる(3)

その他





 職場での人間関係の悩みが、いったんの解決を見ました。あくまで「いったん」ではありますので、今後どのように転ぶかはわかりません。

 わたしという怪人は、予想外に和解・生存ルートに入りました。おかげで、針のムシロ感や、出勤のたびに感じていた重圧が多少マシになりました。

 ……まあ、ニチアサ怪人的には、まだ「味方キャラを庇う見せ場をもらって、華々しく死亡退場」等の可能性もありますが、とりあえず和解はできました。
 わたしは、人間は相互不理解の生き物であるという持論を持っていますが、それはそれとして、和解できることもあるとは思っています。嫌い合っていても、積極的に害し合うものではないと双方納得するということです。


 事の起こりはわたしの心身の不調によるものでした。調子の悪さから、普段に輪をかけて無口で不愛想になっていたもので「○○さんが冷たい」と人事に通報されたわけです。もっと噛み砕いてしまえば「あいつが気に食わない」と言われたわけです。何らかのハラスメント認定をされるものではなく、性格面での相性がよくないのだろうとは、人事からも言われました。
 人事やら、部署内での直属の上司やら、職種別の直属上司やらを交えて尚、「性格の不一致」問題が長引いたのは、相手方がわたしに何を求めているのかが明かされなかったことが大きいように思います。

 解決すべき課題に出会った時、たいていの場合において、その着地点というものはあらかじめ何パターンが予想ができるものです。着地点が見えているのなら、そこに向かう道程を用意して、順に相手方に提示していき、折り合いのつくところを見つけられます。
 しかし、今回はその着地点が霧中のものでした。正確には、相手方との間に入っていた人事たちから伏せられていました。
 相手方の望みが「○○さんに異動(または退職)してほしい」なら、わたしも潔く転職すればよい話です。あるいは前向きに「こういう場合にはこう対応して欲しい」という指定があるのなら、もちろん善処します。

 結局、間に入った方々が要望を伏せていた真意はわかりません。「成長の為に、○○君に自分で考えてほしかった」というありがちなものかもしれません。わたしにとっての最善手が、すべて最悪手で、わたしが培ってきた人格は全部無駄で、わたしはなんにも頑張ってないと言っておきながら。そういったことを言うのなら、わたしが考えたところで、全部無駄になると分かっているでしょうに。

 長引いて長引いて長引いて、冷戦状態に限界が来た頃にようやく、相手方の望むところを抽象的に聞かされました。
 具体的な内容でなくても、望まれる着地点が見えたのなら、解決・折衷・妥協の糸口も見つかります。怪人側の立ち位置にある自身への皮肉を込めて、憧れのヒーローの言葉を真似るなら「見えた! 勝利のイマジネーション!」「勝利の法則は決まった!」というところです。
 
 解決策が思い浮かんだのなら、時を待たずに実行に移ります。
 わたしが何を思っいて、陰に日向に何をしていたのかという話や、わたしの人間嫌いの話をして、相手方と意見交換をしました。今まで恩着せがましくならないように、あえて述べずにいた色々に概ね納得してもらえたようで、諸々のつじつまが合ったようです。変わらず「あたたかみ」は持てませんが、事態は好転して、今日に至ります。



 ブログ読者の一部の方はよくご存じのことと思いますが、わたしは、依存・執着から、好きな相手に対しては非常にウェットな対応をしています。妖怪濡れ女に劣らぬぐっしょり具合です。高温多湿です。梅雨の化身と呼んでもよいのではないでしょうか。
 一方で、仕事の場においては、冷たく、そして乾いています。かつて妻から「ロボットだと思っていた」と言われるぐらいには機械的で人間味がないようです。我ながら両極端なことです。

 わたしも他人も、それぞれに人格ある生き物ですから、コミュニケーションに正解というものがないのはわかっています。なので、正解と思っても大いに間違えることもあります。好きな相手に近づこうとすれば「ストーカー」と呼ばれ、そうでない相手と距離を置けば「冷たい」と言われます。壊れてしまった人間関係もあれば、今回のように、円満とはいかずとも和解できる関係もあります。


 知人友人は離れていき、残るわたしはやはり怪人。
 私情無情に場慣れていけど、遺る「わたし」は逸る灰燼。
 詩人死人を気取っていても、手を貸す渡しはまるで皆尽かいじん


 人間関係は難しいです。和解できたとはいえ、今回のことでまたひとつ、人間関係が煩わしくなりました。わたしはいつでも人間嫌いの怪人です。

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